最後の秘境東京藝大

二宮敦人さんの著書「最後の秘境東京藝大」を読み終えたので、感想を書きます。

概 要

二宮さんは、以前「四段式狂気」という小説を読んだことがあって、名前を知っていました。

あれ?この人は、ホラー系の小説書いてる人じゃなかったっけ?と思って、手に取ったのが最初。

中を覗いてみると、全然ホラーじゃなくて、芸術大学の人たちの面白い日常を書いているものでした。ちょっと芸術に興味を持ち始めていたぼくは、本書の購入を決めたのでした。

というわけで、本書は東京藝術大学学生へのインタビュー形式で話が進んでいきます。

とっても個性的で、輝いている人達のお話。元気がもらえる作品だと思います。

東京藝術大学とは

東京藝術大学って、ぼくは本書で初めて存在を知りました。

場所は上野にあるらしい。上野公園の付近。

音楽を勉強する音校と、美術を勉強する美校の2つがあるようです。

本書はどちらの学部にも焦点を当てていて、2つの学部の違いがとても面白く紹介されています。ちょっと引用すると「オペラとゴリラ」とか。

芸術とは

藝術とは、特殊な素材・手段・形式により,技巧を駆使して美を創造・表現しようとする人間活動,およびその作品。

建築・彫刻などの空間芸術,音楽・文学などの時間芸術,演劇・舞踊・映画などの総合芸術に分けられる。

美の創造と表現が芸術だということみたいです。

面白かった、印象に残った話

音楽は一過性の芸術。再現性がないということでしょうか。これはよくわかります。娘のピアノの発表会とか聞いていても、同じ演奏は二度と聞けないんだろうな、と感じていました。その日のその時にしかその音楽は聞けない。だから真剣に聞くし、感動するのだと思います。

板をプレゼントしてくれるお義父さん、そして喜ぶ娘。著者の奥様は藝大生らしいです。美校の。ある時、お義父さんから一枚の板をプレゼントされて、「何作ろっかなー」って喜んだそうです。作ることが生きがいで、大好き。そんな娘のことを理解している父親。とても素晴らしい関係だと思いました。ぼくも娘のことを、ここまで理解できるようになりたいと思いました。

打楽器奏者が最後にティンパニをたたき割り、上半身をつっこむ。「芸術は爆発だ」とは岡本太郎さんの言葉ですが、まさにそのことなのでしょうか。楽器だって安いものじゃないだろうに・・・・・・。

インスタレーション。空間全体を作品全体として体感させる美術のこと。インストール=設置。作品が設置された空間そのものが作品になる。

感想まとめ

本書を読んで思ったのは、アートって一つのツールなんだということ。

人が人であるための。

芸術は無駄を作ることであり、その無駄こそが人間が人間であるために必要なもの。

伊坂幸太郎さんの「オーデュボンの祈り」を読んだ時に、ぼくは思いました。音楽って生きていくうえでなくてもよいもの、だけどなくてはならないもの。音楽だけじゃなかったんだ。芸術こそが「人間が生きていくうえで、なくてもよいもの。だけどなくてはならないもの」なんだ。

本書には本当に素敵な人たちが登場します。口笛を極める人。古典と可愛いを融合させる人。血の滲むような練習を続けるピアニスト。からくり人形に大学生活を捧げる人。行方不明になる人。

奇人や変人と呼ばれる人たちみたいですが、1つのものに情熱を注ぎ、楽しんでいる人達は、それだけで幸せなのだと思います。熱中するものが特にないぼくからしたら、羨ましい限りです。

最近「暇と退屈の倫理学」という本を読みましたが、本書(東京藝大)に登場する人たちには必要ない本なのでしょうね。

話は変わりますが、先日プロジェクションマッピングで面白い作品を観ました。角川武蔵野ミュージアムで。アートの未来は、科学技術の進歩とともに変わっていくこともあるのでしょう。VRでの芸術とかもあったりするのでしょうか。

最近ちょっと芸術に興味がでてきているので、いろいろ勉強してみたいと思います。

最後に、東京芸大の「藝祭」に行ってみたいな!お神輿のクオリティがとんでもないらしいです。2022年は9月2日,3日,4日らしい。神輿は例年、初日のみらしいので、金曜日か~。休み取ろうかな(*^^)v