伊藤計劃さんのデビューSF小説、虐殺器官を読み終えたので、あらすじ紹介と感想を書いたもの。
あらすじ
9.11以降の、”テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう・・・・・・。彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす”虐殺の器官”とは?現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション。
文庫裏表紙より
自作目次
第一部
1 死者
2 イントルード・ポッド
3 行軍
4 標的A
第二部
1 ジョン・ポール
2 混沌の芽
3 追跡
4 器官
5 認証
6 クレーター
第三部
1 虐殺の匂い
2 戦争、啓蒙
3 懺悔の物語
4 苦痛の決断
5 襲撃
6 虐殺の王、深層の文法
7 計数されざるもの達
第四部
1 CEEP
2 レゾン・デートル
3 世界が変わった日
4 任務終了
5 襲撃、そしてリゲティ
第五部
1 メタヒストリー
2 養鯨場
3 潜入
4 虐殺器官
5 作戦終了
エピローグ
感 想
かなり高評価の数が多い作品だけあって、ものすごく面白かった。
あらすじにある、後進諸国で内戦が絶えない理由。
虐殺の器官の正体。器官とは、「生物体を構成し、一定の形態をし、特定の生理機能を営む部分。」
例えば人間の臓器も器官。ゾウの鼻も器官。
器官によって滅びた生物もいる。本書ではサーベルタイガーの牙があげられている。
そして、「虐殺の器官」とは・・・・・・。
ジョン・ポールがなにをしているのか、そしてその目的とは・・・・・・。
本当に世界はこの小説の世界のようになっていくのでは、という風に思ってしまいます。
監視社会、というとジョージ・オーウェルの1984年が思い浮かぶが、本作内でも1984年や動物農場は登場する。
なんか、読んだことある作品がでてくるとうれしくなってしまう。
作品内にでてくる近未来の科学技術も面白かった。現代では使われている技術もあるとおもわれるが。
・目薬?を差すと目に情報が映し出される技術。ナイトヴィジョンもできる。
・航空機から射出されて、敵地に侵入するポッド(サイヤ人の一人乗りの宇宙船?をイメージした。)
・相手の頭に貼ると、電気信号で相手を強制的に動かすパッチ。捕虜連行に便利。
・完全認証社会。どこに行ってもわかる。
・痛覚マスキング。怪我したのはわかるけど、痛くない。
・無人機での通信中継
・現地からの座標送信での爆弾投下
・子供を殺せる精神状態にできる技術。カウンセリング?
・汗を還元するインナー
・環境追従迷彩(透明マントみたいな感じ?)
主人公であるシェパードの最後の決断にも納得。
ゼロ年代最高のフィクションとあったが、ぼくにとっては今まで読んだSFの中で一番面白かったといえる!
初めて聞いた用語
語源はギリシャ語で「同じ」を意味するταυτοから。ある事柄を述べるのに、同義語または類語または同語を反復させる修辞技法のこと。同義語反復、類語反復、同語反復等と訳される。
「賢明な愚者」「明るい闇」など、通常は互いに矛盾していると考えられる複数の表現を含む表現のことを指す。
英単語のボードゲーム。英単語を作っていくボードゲームらしい。英語の勉強にもなるみたい。子供に買ってあげようかな。
議員が院外者と面会する控室lobbyをおもな舞台として,特定の圧力団体の利益のために議会に働きかけ,請願や陳情を仲介する院外運動団体の運動員。米国の議会用語として生まれ,各国でも用いられている。
圧力団体の利益を政治に反映させるために、政党・議員・官僚などに働きかけることを専門とする人々。米国議会のロビーなどで議員と話し合うという慣行からできた語。→ロビー活動
ギリシャ語に由来する感嘆詞で、何かを発見・発明したことを喜ぶときに使われる。エウレカセブンのエウレカもこういう意味が含まれてるのかな?