本書では、「戦いの9原則」を通して、世界史上の30の事例における勝敗の分岐点を解説します。本書で紹介した戦いにおける「成功」の原理・原則を応用することによって、仕事や人生の「勝利」を勝ち取ることができます。
裏表紙より
著者は「木元寛明」氏。元陸上自衛隊幹部であり、戦術関連の本をいくつか執筆されています。
歴史上の「戦争・紛争」で使用された「戦略・戦術」から「戦いの原則」を項目ごとに検証したものです。
そこから「何を得るか」は著者も言っているとおり、「私たちの日常も大なり小なり戦いの連続である」ので、「戦いの原則」を小さな勝利のヒントにする、ということだと思います。
戦いの原則
人類史2600年は戦いの歴史。その歴史を記録・分析し体系化したのが「戦いの原則」。
それは適用すれば必ず勝てるものではなく、状況に応じて原則を適用すれば「成功の見込みが上がる」もの。
目的・目標の確立
ノモンハン事件 | 日本側が決定した国境をソ蒙軍が越えたため関東軍が断固として排除しようとした。 |
ナポレオンのロシア遠征 | フランス革命後の諸外国からの干渉に対し防衛戦争を開始したナポレオンが欧州を席巻 |
西南の役 | 若者たちの激情に引っ張られるように西郷は勝ち目のない戦いを始めてしまうのであった |
ガダルカナル島作戦 | 大本営にもその名を知らない参謀がいたほどのソロモン諸島東端近くの辺境の島だった |
目的がぶれると、ダメだということですね。
攻 勢
仁川上陸作戦 | 北朝鮮の軍事侵攻が引き金となった朝鮮半島全域を戦場とした国際戦争 |
アウステルリッツの戦い | ナポレオン皇帝が直率する大陸軍(グランド・アルメ)は欧州最強の軍隊 |
長篠の戦い | 無敵を誇っていた武田騎馬軍団を銃撃で壊滅させ長篠城の救援を完遂させた鉄砲隊の戦い |
攻勢の方が主導権を握れるから有利、ということみたいです。スポーツとかでもそうですかね。
集 中
釜山橋頭堡の戦い | 北朝鮮軍の圧倒的猛威を前に国外撤退を拒否し半島南東部で徹底抗戦の姿勢を示した国連軍 |
第3次中東戦争 | 宗教対立を背景に経済問題や政治問題などが複雑に絡まりあい解決の糸口が見出せない紛争 |
山崎の戦い | 敵の明智光秀や、織田家の他の重臣たちの準備が整わないうちに戦いを仕掛けた羽柴秀吉 |
ガルダ湖畔の戦い | オーストリアの脅威を退けたナポレオンが示した戦術家としての才能 |
サラリーマン金太郎で、砂漠かどっかで工事してて、砂嵐で破壊されて一から工事をやり直す、って話があったような覚えがあります。
そのときに金太郎がとった対策が、全労働力を集めて、一か所ずつ完成させていく、という方法だったように記憶しています。まさに集中の原則を適用しています。
兵力の節用
日本軍の兵力分散 | 個別の戦いで勝つことはあっても物量作戦でアメリカの工業力に追い付けず日本は降伏した |
ベトナム戦争 | 資本主義陣営と共産主義陣営が引き起こした激しい対立。冷戦を背景とした大規模な代理戦争 |
節約して、ここぞというときに力を使う。
個人の働き方にも適用できますね。
機 動
電撃戦 | ドイツ軍の電撃戦に抗する術なく英仏連合軍は敗退し、ドイツ軍はパリに無血入城を果たす |
北アフリカ戦線 | イタリア軍vsイギリス軍の構図が戦線の拡大で枢軸国軍vs連合国軍の戦いに |
フォークランド紛争 | 長らく決着のつかなかった領有問題が政治運動から軍事行動にエスカレートした |
有利にたつには動く。動くべき時に動く。動くべき位置に動く。
状況に応じてすばやく活動できること。
戦力を適切な時点に適切な地点に位置させること。
指揮の統一
ノルマンディ上陸作戦 | 連合国の各軍が一丸となってフランス上陸を果たすべく大型上陸侵攻作戦を決行した |
イラク戦争 | 生物兵器の保有やアルカイダへの協力などの疑惑が渦巻きアメリカが先制的自衛権を行使 |
関ケ原の戦い | 上杉軍が動かなかったために東軍を挟撃するという戦略はならず関ケ原で対峙する形となった |
「船頭多くして船山に上る」ですね。日本の諺にもあるとおりです。仕切るやつがたくさんいると下は動けません。
奇 襲
砂漠の嵐作戦 | 石油問題に端を発しイラクが軍事侵攻してクウェートを制圧するが、多国籍軍が介入 |
ビン・ラディン暗殺作戦 | アルカイダを支えてきたカリスマ指揮者の暗殺を目的とした隠密奇襲作戦 |
戦車の出現 | 三国同盟、三国協商、サラエボ事件、ソンムの戦い、カンブレーの戦い、ヴェルサイユ条約 |
原爆の誕生 | ポーランド侵攻、真珠湾攻撃、太平洋戦争、ミッドウェー海戦、スターリングラード攻防戦、ノルマンディ上陸作戦、、マンハッタン計画、原爆投下 |
義経の「一の谷の戦い」が紹介されるのかと思いましたが、なかったです。現代に近いところの奇襲が紹介されています。
奇襲は成功すれば強力ですね。
警 戒
ミッドウェー海戦 | 日本軍機動部隊はミッドウェー島の攻略と、敵機動部隊撃滅の二兎を追った |
桶狭間の戦い | 今川義元が尾張領内にまで侵攻してきても清州城から動かなかった織田信長の果敢な決断 |
サイバー戦争 | 電脳世界から始まる新時代の戦争 |
相手の情報を入手して、自分の情報は漏洩しない。ビジネスでも適用できますね。
簡 明
日本海海戦 | バルチック艦隊は対馬海峡を通過すると信じて全艦隊を対馬海峡に置いた東郷大将の戦術 |
アレクサンドロス大王の戦い | ギリシャ統一ばかりではなく北アフリカからインドまでをその版図に入れた大帝国を築いた |
毛沢東の十六字戦法 | 国民党、日本軍を相手に長期にわたって戦い続けてきた毛沢東率いる中国共産党 |
わかりづらいより分かりやすい方がいいですよね。小難しいことばかり言われてもわかりません。簡潔・明瞭が一番!
秋山真之の「天気晴朗ナレドモ波高シ」を思い出しました。その場で必要なことを最小限の言葉で伝える。最高の電報です。
普段でも冗長に話し続ける人がいますが、ちょっと迷惑なときもあります。仕事中は簡潔・明瞭を心がけたいものです。
読んだ感想
私が自分の生活に活かしたいと思ったのは「目標の原則」です。
目標は、目的を達成するための手段です。上下の関係です。
例えば人生の目的が「幸福になる」ことだとします。そのための手段がいくつかあるとします。
「健康」「お金」「家族」「仕事」なんでもいいと思います。自分が幸せだと感じること、幸せになれることであれば。これが目標です。
では、「健康」を目的とすればその手段は・・・・・・。「食事」「運動」「睡眠」「ストレス対策」とかになりますかね?
では「運動」を目的とすれば、その手段は・・・・・・。「スポーツ」「散歩」とかですか。
じゃあ、「散歩」だと、週何回?何分?とかってなってきます。
目的を細分化していくと、具体的な「目標」が出てきます。その具体的な目標の積み重ねで、目的を達成する。
これって、仕事や私生活でも適用できますよね。漠然とした目標より、具体的な目標の方が達成する気になります。
それに、目的が定まってないとフラフラしてしまいます。しっかりと目的をもって、充実した人生を送りたいものです。
本書は図や写真を多用し、それぞれの作戦を概要、戦術、結果でまとめてくれているので、わかりやすいです。
失敗例と、成功例を載せてくれているので、「原則に則るとどうなるか」「原則から外れるとどうなるか」がわかります。
孫子の兵法をビジネスに活かすのが流行って久しいですが、本書も十分に仕事や私生活に活かすことができると思います。
原則を活用して人生の勝率をあげたいものです。