ディーリア・オーエンズ著、「ザリガニの鳴くところ」を読み終えたので、内容のあらすじ紹介と感想を記事にしたものです。読もうか迷っている人の参考になれば幸いです。
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく・・・・・・みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。
表紙裏より
目 次
- 母さん
- ジョディ
- チェイス
- 学校
- 捜査
- ボートと少年
- 釣りの季節
- 見つからない痕跡
- ジャンピン
- 枯れ尾花
- 満杯の麻袋
- ペニーとトウモロコシ粉
- 羽根
- 赤い繊維
- ゲーム
- 読み書き
- 敷居を越える
- 白い小舟
- 怪しい行動
- 七月四日
- クープ
- 変わらない潮
- 貝殻
- 火の見櫓
- パティ・ラヴの訪問
- 岸を目指して
- ホッグ・マウンテン・ロード
- エビ漁師
- 海草
- 潮衝
- 本
- アリバイ
- 傷痕
- 小屋の捜索
- コンパス
- キツネ罠
- メジロザメ
- サンディ・ジャスティス
- 遭遇
- サイプレス・コーヴ
- 小さな群れ
- 監房
- 顕微鏡
- 監房の友人
- 赤い帽子
- 王様
- 専門家
- 旅
- 変装
- ノート
- 欠けた月
- スリー・マウンテンズ・モーテル
- ミッシング・リンク
- 評決
- 草の花
- ゴイサギ
- ホタル
感 想
物語は、カイアの成長をたどる部分と、村での不審死事件を捜査する部分とが交互に進んでいきます。僕が面白いと思ったのは断然、カイアの成長記の方です。割合もだいぶそっちの方が多いですけどね。
6歳から独りで生きていくカイア。幸せになることを願わずにはいられないです。
この本を読むと孤独との向き合い方や幸せとは何なのかを考えさせられます。カイアは小さい頃は孤独と闘い、不幸だと泣いたことでしょうが、「人生」ということで言えば幸せな一生だったのではないでしょうか。自分の好きなことに没頭して、それで生活が成り立つ人生って羨ましいです。
物語はカイアが成長するにつれて、事件の時期へ近づいていきます。どういうふうに重なるんだろうとワクワクしながら読みました。
事件の真相は――
読んでのお楽しみですね。
ミステリとしても面白いし、カイアの成長譚としても面白い。濃密な物語です。
生物学の話が随所で出てきますが、その中で僕が得心したのは
生物学では善と悪は基本的に同じであり、見る角度によって変わるものだと捉えられている。
「ザリガニの鳴くところ」より
「事実」がある。善悪は立場によって変わる。戦争もそうだと思いますし、個人の価値観によって見える景色は違うと思います。
原始的な衝動のせいで、現代にはそぐわない古い遺伝子のために――
「ザリガニの鳴くところ」より
「スマホ脳」という書籍で、現代病は、人類の遺伝子が現代に適応できていないから起こるものだという記述があったのを思い出しました。
「遺伝子は狩猟をしていたころのまま」だと。「デジタルに適応できていない」と。
カイアは、自然に育てられました。文字を教えてくれたのはテイトですが、「生き方」は湿地に生きる動物、昆虫、鳥たちが教えてくれたのです。
彼女は強く、美しく、生き抜きました。
僕も彼女に倣って、強く生きたいものです。