哲学を学ぶのは何のため?
哲学を学ぶ理由
①状況を正確に洞察する
哲学の思考法を学ぶことで、今何が起きているのか、これから何が起こるのかという問いを立て、考察することができる。
②批判的思考のツボを学ぶ
自分たちの行動や判断を無意識のうちに規定している暗黙の前提に対して、意識的に批判・考察してみる知的態度や切り口を得ることができる。
③アジェンダを定める
いまここでだけ通用している常識を見極め、課題を見つけ出す。見極めるための選球眼を与えるのが哲学。
④二度と悲劇をおこさないために
過去の哲学者が向き合った問を知ることで、同じ過ちを繰り返さない。
悪の陳腐さ
悪事は、思考停止した「凡人」によってなされる。
悪とはシステムを無批判に受け入れること。批判的思考が大切。
認知的不協和
ヒトは自分の行動を合理化するために意識を変化させる。
人間は合理的な生き物ではなく、行動を起こしたあとから「合理化」する生き物。
「事実」と「認知」の間で発生する不協和を解消するために、認知を改める。
権威への服従
人が集団で何かをやるときには、個人の良心は働きにくくなる。
分業が基本の社会では、悪事をなしている自覚がないまま、悪事に手を染めている。
自分がどのようなシステムの一部なのかを意識する。
フロー
挑戦レベルを上げて、スキルを高める。この際、不安や強い不安の過程を経ることを覚悟しなければならない。
マキャベリズム
どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家の利益を増進するのであれば許される。
国家の存亡にかかわるようなときのリーダーの心得。
常時適用するようなものではない。
他者の顔
分かり合えない人こそが気付きを与えてくれる。
「わかる」ということは「かわる」ということ。わかった時点でわからなかった時の自分とは違う人間である。
「わかる」ためには「わからないこと」と出会わなければいけないので「分かり合えない人」との出会いは自分が変わるきっかけになる。
マタイ効果
持っている人は与えられて、ますます豊かになるが、持っていない人は、持っているものまで取り上げられる。
勉強もスポーツも4~6月生まれの方がよい。スポーツ選手は4~6月生まれが多い。早生まれの子より11カ月分経験を積んでいるので、スタメンになりやすい。スタメンになると、よりよい練習ができる。成功体験を積むと、さらに頑張れる。
むすんでひらいて
ルソーの作品らしい
神の見えざる手
成り行きに任せると、一番適正なところで落ち着くこと。
市場における最適な価格は、ランダムに様々な価格が提案され、そのうち妥当性のない価格は進化論でいう自然淘汰のプロセスによって排除され、最も妥当と思われる価格に落ち着く。
格差は悪か?
本当に公正な世界は本当に幸せか?
公正な世界の中で下位に位置付けられた人たちには、逃げ場がない。
社会のせいではなく、自分の能力、性格、努力、容姿といった点で人より劣っていることに他ならないから。
公正世界仮説
世界は公正であるべきだし、実際にそうだ、と考えること。
世の中というのは、頑張っている人は報われるし、そうでない人は罰せられるようにできている。
「一万時間の法則」何かの世界で一流になりたければ、一万時間のトレーニングをしなさい。そうすれば、あなたは必ず一流になれる。
違う。世界は公正ではない。努力が報われないとき、人は世界を恨むようになる。
はじめの一歩の「努力が全て報われるとは限らない、ただ、成功したものは皆すべからく努力している。」というのが正しいのだろう。
『究極の鍛錬』でもあったが、努力は「正しい努力」をしないと意味がない、とあった。
ただたんに一万時間努力してもだめだろう。正しい努力を誰よりもする。そうすることで一流になれる。
脱構築
「二項対立」の構造を崩す。Aという主張にBという主張をぶつけるのではなく、そもそもAなのかBなのか、という問題設定自体がおかしい、と指摘する。
二項対立自体は使いやすくわかりやすいのでよく使用されるが、思考の広がりを妨げる場合もあるので、「脱構築」という考え方を知っておく必要がある。
未来予測
未来は、現在から行われる人々の営みの結果。
未来は予測するものではなく、想い描くもの。
未来予測は外れて当たり前。「どのような未来にしたいか」が大事。
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ。」アラン・ケイ
まとめ
哲学的な考え方、ものの見方について書かれている本書。著者が、実際に使えるものを集めただけあって、参考になるものが多かった。
個人的には、フローに関するところが面白かった。最近仕事で不安なことが多かったが、それは、フローに達する過程だったということだ。これからスキルを上げることで、フローに近づくことができる。スキルを上げなければ不安が消えることもない、とも言える。
その途中で「覚醒」という工程に入るかもしれない。そう思うと、仕事をもうちょっと頑張れそうだ。自分にも「覚醒」する瞬間がくるのだろうか・・・・・・。
総じて、面白い本だったと思う。興味のある方は一読してほしい。