本の情報
著 者 | 井上 真偽 |
発行所 | 幻冬舎 |
ページ数 | 304 |
あらすじ
地震によって地下に取り残された女性。彼女は、見えない、聴こえない、話せない、三重障害だった。
彼女をシェルターまで誘導する役を負ったのは、ドローン操縦士のハルオ。
彼はこの高難易度のミッションをクリアすることはできるのか。
感想ネタバレなし
災害現場でのドローンの活躍はこれからもっと広がっていくんだろう。
本書の主人公のようなドローン操縦技術を持っていれば、様々な場面で活躍できそうだ。
主人公の過去のトラウマあり、困難につぐ困難、トラブルに重なるトラブル、そしてトラウマを克服し、彼女との和解もあり。とてもエンターテインメントな作品だった。
「アリアドネ」とはギリシャ神話の女神。迷宮に入った英雄を地上に返すための糸を渡したことから、問題解決の道しるべ的な意味で「アリアドネの糸」という言葉が使われるそうだ。本作のアリアドネはドローンの名前として登場する。
「無理だと思ったらそこが限界」が印象に残った。そして、物語の最初と最後で意味が変わる言葉。
ネタバレあり感想(白文字)
要救助者の女性の障害が、詐称だと疑われるシーンがあった。主人公はそれを、視覚、聴覚を失っていることから成長した「超感覚」のおかげである、と推理する。
音をよく聞こうとすると目をつぶったりするように、感覚をひとつ消すと、他の感覚が冴えるのは、ありそうな気がする。3つの感覚を失っている彼女が、触覚などの感覚が冴えて、常人では感じえないことを感じるようになるのは、あってもおかしくはなさそう。
だけどそんなことではなく、物語の途中で行方不明になった級友の妹が、実は地下にいて、彼女と合流し、一緒に行動をしていた、ということだった。
その妹というのも障害持ちで、話すことができない。
そんな二人が一緒に行動し、出口をめざす。
主人公の、「まさか彼女が誰かを助けようとしていたなんて」という言葉が印象に残った。
三重障害でも前向きで、何にでも積極的な女性。本作の主人公は、ハルオではなく、彼女だったのではないだろうか。
作者が作品を通して言いたかったことは、彼女が「無理」や「限界」について語る、あのシーンだろうなあ。一番印象に残ったし。
総じて、面白い作品だった。映像化しそうな作品。