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朝井リョウ著『何者』と『何様』を読み終えたので感想を書きました。

何 者

著 者朝井リョウ
発行者佐藤 隆信
発行所新潮社
発行日平成27年7月1日(文庫) 単行本24年11月
頁 数346

概 要

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて・・・・・・。直木賞受賞作。

文庫裏表紙より

俺が歩いていたところを線で繋いでいけば、「一人暮らし」という星座ができそうだ。

あの人の「忙しい」は本当にちゃんとした「忙しい」で、俺が同じ言葉を使ったとしてもきっと全く同じ意味にならない。

「若い時の苦労は買ってでもしろ」ってよく言われるけど、そんなことないって思ってた。苦労なんかしないにこしたことないじゃんって。でも結局若いときに楽なことしかしてないと、年取ってから苦労するんだよな。だから、遅いか早いかの違い。どうせするんなら、若い時の方がマシだよね。体力もあるし、飲み込みも早いし。恥もかけるし。ぼくは楽な道を選んだわけではないけど、流れに身を任せて生きてきた感じかな。けどやっぱり苦労の量が足りなかったらしく、今大変苦労しています。あ~会社辞めたい!!

拓人の一面は、誰しももっているのではないでしょうか。自分より不幸な人を見つけて安心する。ちょっと冷めた目で見て、自分を特別扱いする。

いや~、最後の場面は読みごたえたっっぷりでしたね。そのあとの「何者」のところも・・・・・・。傑作と言われているだけありました。

拓人はあのとき、理香に全部ぶちまけてもらって、運がよかったな。ものすごく辛い経験だったろうけど。あれがなければ、拓人は変わることができずに、ずっと就職できないことになるのかも。

以下、個人的に読み応え抜群だったところ。

247~254 瑞月vs隆良。うっぷん晴らす感じでスッキリ。冷めた目で達観したつもりになっても腹は膨れません。生きていくためには働かなければ。 

300~319 理香vs拓人。カッコ悪くても、ガムシャラにでも足掻くしかない。人に笑われても、バカにされても。笑ったり、バカにして何もしないより。

319~328 拓人の本音。達観した気になって、頑張っている人をバカにするのは、カッコ悪いな。人の悪い面を探すより、人の良い面を見つけたいよね。

何 様

『何者』のアナザーストーリー。『何者』の登場人物たちの周辺の人物たちにスポットを当てた作品。

本の情報

著 者朝井リョウ
発行者佐藤 隆信
発行所新潮社
発行日2016年8月30日
頁 数316

概 要

『何者』との関係は以下のとおり。

「水曜日の階段はきれい」 光太郎の過去。ずっと忘れられない人との話。

「それでは二人組を作ってください」 理香と隆良の出会い。

「逆算」 サワ先輩のその後。クリスマスベイビーの誕生日は?

「きみだけの絶対」 ギンジの甥目線の話。同じものを見ても、感じることは違う。

「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」 出てくるのは瑞月のお父さん。お父さんが本当に浮気をしていたかどうかが判明。

「何様」 表題作。よく知りもしない他人を面接で評価する私たちは「何様」なのか。誠実への一歩目も誠実のうちに入れてあげて。組織の一番上か、一番下でない限り、仕事とは、立場の違う人と人の間に存在する。その中で、あらゆることを、どちらの気分も害さないように調整できる能力――。それが仕事ができる能力。当事者意識。父親になる覚悟。

感想まとめ

本当に、朝井さんの作品は共感できる部分が多い。登場人物たちの誰かのどこかが、自分にもある部分。