朝井リョウさん著『どうしても生きてる』を読み終えたので感想を書きます。

著 者朝井 リョウ
発行者見城 徹
発行所幻冬舎
発行日2019年10月10日
頁 数322

感 想

本作は6つの物語で構成されているので、物語ごとに感想を書いていきます。

6つの物語に共通しているのは「どうしても生きてる」という感覚。

人生、うまくいくことばっかりじゃない。ふと、どうでもよくなる瞬間。後ろめたさばかりの人生。

健やかな論理

○○だから××。そんな明確な論理。人生は方程式ではない。=で成り立つほど人生は簡単ではない。

だから苦しいし、不安だし、空しかったり、満たされなかったりするんだけど、生きてるんだから、生きないと。

流 転

自分がコンパスを取り換え続けたこの20年間。好きだなあ、この表現。

幼少からコンパスが定まっている人は大成するんだろうな。

ぼくのコンパスの指針は常にグルグル回ってます。

七分二十四秒めへ

生きていくうえで何の意味もない、何のためにもならない情報に溺れているときだけ、息ができる。

誰かにとってはくだらないコンテンツでも、誰かにとってそれは生きがいかもしれない。

風が吹いたとて

風が吹けば桶屋がもうかるの逆は・・・・・・。

子供がいない夕食。うちはいつになるかなあ。淋しいよなあ。

そんなの痛いに決まってる

転職活動で大事なのはその人がどういうことを成し遂げられるか、という点。

人間には誰にとっても誰でもない存在として、思ったことをそのまま言える時間が必要。

「頭の中の篩(ふるい)」かあ。面白い表現だなあ。ぼくの頭の中の篩の目はかなり細かいなあ。本音をストンとしゃべることなんて誰に対しても、ない。仕事はもちろん家庭でも。

常に本音を隠して建前だけで生きている。悲しい?そんなことない、本音を言わない方が楽だ。

心のままに泣いても叫んでも驚かない人がひとりでもいれば、人は生きていけるのかもしれない。

悪い籤ばっかり引く人生。

一つではうまく結べなかったとしても、いくつか繋げて長くしたら蝶々結びだってできる。

傷ついた体を癒す包帯にだってできるかも知れない。

切ない話ではあったけど、他の話にはない、いい感じの読後感だった。

たぶんこの主人公はこのあと幸せになるんだと思う。

感想まとめ

どうしても生きてる。

特に死ぬ理由もないから、生きてるんだよね。

なんていうか、すっごい心が重たくなる小説だった・・・・・・。

この閉塞感だらけの世の中、苦しんでる人ばっかなのかな。この小説の登場人物みたいな人達、いっぱいいるよね?

ぼくもたぶんその中の一人。多かれ少なかれ、ここに出てきた人たちの、誰かのどこかに似た部分を持ってる。

すごく息が詰まる世の中だけど、やっぱり「どうしても生きなきゃ」ね。