『もっとも美しい数学 ゲーム理論』を読み終えたので、感想を書きます。

本の情報

著 者トム・ジークフリート
訳 者冨永 星
発行者木俣 正剛
発行所文芸春秋
頁 数376

概 要

迫りくる敵艦隊にそなえ、偵察機を北に飛ばすべきか、あるいは南か?

人気のバーに行きたいけれど、でも混雑している夜には行きたくない。

ゆっくり餌を投げる男とせわしなく餌を投げる男、アヒルの群れはどう動く?

公共の利益のための募金箱に、たくさんのお金を入れるべき?それとも?

――そんなときこそ「ゲーム理論」が役に立つ。自分の利益を最大にする「戦略」を探し出す数学、ゲーム理論。それは人間の行動と世界の未来を予測する理論でもある。

天才数学者が生んだこの理論は、経済学を皮切りに、生物学、人類学、神経学などなど、数多の科学の謎を解く万能のツールとなってゆく。

アメリカ屈指のサイエンス・ライターが一流の科学者にインタビューを繰り返し、科学の最先端を紹介しつつ、人類積年の夢である「未来の予測」の可能性を追求する。

知的スリル満点、ゲーム理論入門の決定版!

表紙袖より

興味を惹かれた部分

ゲーム理論とはなんなのか。何がわかるものなのか?

ゲーム理論によって、生物学の謎が解明できる。言語の起源、人がゴシップを好む理由も説明できる。

ゲーム理論とは、人間の集団としての行動を数値を使って叙述し、正確に予測する科学。

ゲーム理論を使えば、進化の過程を説明できる。

ゲーム理論を使えば、進化の過程でどのようにして複雑なネットワークが生まれてくるのか説明できる。

ゲーム理論は、物理的な宇宙を基盤として生まれてきた生命体に関する理論。

ゲーム理論は、人々のふるまいに関する理論。文明を切り開いたのか。社会に秩序がどのように打ち立てられていったのか。

ナッシュ均衡とは、ゲーム理論の基本的概念であり、「ほかの人が行っていることを前提としたときに、各自が最善を尽くしている状態」のこと。囚人のジレンマというゲームが一番わかりやすい。囚人のジレンマを理解すると、人は自分のことだけを考えてはいけないことが理解できる。そして、人のことを考えない人が存在すると・・・・・・。

囚人のジレンマで、ナッシュ均衡から誰かが、「全面的な抜け駆け」をすると「オウム返し」となり「寛大なオウム返し」から「常に協力」するが「全面抜け駆け」となる。

これが人類の「戦争」と「平和」の理論。平和とはナッシュ均衡の状態であるが、だれか(どこかの国)が抜け駆けをすると、その近郊は崩れ、戦争となる。

ゲーム理論の魅力。それはこの理論が実生活の多くの側面に反映されていること。社会での生き方の参考になる。

ゲーム理論で扱うゲームの中には「最後通牒ゲーム」「公共財ゲーム」「タカハトゲーム」等あり、それぞれが社会で起こる場面に当てはまる。

自然の法典とは、人間の行動のルールブックであり、自然な状態で人間がどうふるまうかを明らかにしたもの。

神の存在に賭ける利点がある。それは、例え信心が間違っていても、失うものはそれほど大きくないということ。しかし、神が実在するとしたら、神を信じることによって永遠の幸せが手に入る。神の存在する確率は低くても、利得は非常に大きい。神の存在に賭けるべき。

数学的な期待値とは、ある結果が起こる確率とその結果の価値とをかけたもの。

統計力学とは、あらゆる状況における物質のふるまいを、明確な量で表そうとするもの。統計力学(物質)≒ゲーム理論(人間)。

統計学とは、社会のさまざま側面を数値で表すこと。

エントロピーを最大にする。全くわからないことを予測する。あらゆる可能性があることを前提とする。平均が予測となる。なぜなら、平均になるパターンが最も多いから。

人間行動の科学が、ゲーム力学。

ゲーム理論の未来像とは。科学というパズルのかけらが一つ残らずつなぎ合わされるときがくるかもしれない。つなぐための理論こそ、ゲーム理論である。

べき法則とは、ごくわずかの大きなものと、数多くの小さなものを含む系に関する法則。説明を読むと、ハインリッヒの法則に似てる?

感想まとめ

ゲーム理論について、歴史や偉人の話を踏まえ、説明している本。

非常に面白い内容が多く、教養として勉強になった。

もともとは、『今際の国のアリス』って漫画で「ナッシュ均衡」という言葉を知り、興味を持ったゲーム理論。

「囚人のジレンマ」は、子供にも面白く説明できるいい教材だと思う。「自分のことばかり考えていたらダメだよ」って。

社会の様々な場面で使われるゲーム理論。あんまり難しいことはわからないけど、本書は数式とかあんまり出てこないから、文系のぼくでも楽しく読める良書でした。