著 者 | アイン・ランド |
出版社 | アトランティス |
発売日 | 2014年12月15日(第1部) 2014年12月22日(第2部) 2015年3月16日(第3部) |
頁 数 | 550(第1部) 594(第2部) 768(第3部) |
アイン・ランド著「肩をすくめるアトラス」を読み終えたので、感想を書きました。
経済や資本主義に関して勉強したことがなかったので、難しいことはよく理解できませんでした。ですが、ぼくなりに得心したところと、しなかったところ。また、今後の仕事に対する向き合い方、考え方等ごちゃまぜに書いたので、あんまり参考にはならないと思いますが、興味を持ったかたは本書を読んでみてください。
各部の裏表紙に書かれているあらすじを引用しているので、それがネタバレだと思う方は読まない方がいいと思います。
第一部 矛盾律
タッガート大陸横断鉄道の副社長ダグニーは政治的駆け引きに明け暮れる社長で兄のジムと対立しながら鉄道を経営している。成長著しいコロラドの路線再建のため、彼女は起業家のリアーデンが十年をかけて開発した画期的なメタルを採用し、新線を完成させる。だが、企業活動を阻む規制が強まるなか、実業家たちが次々と姿を消していく。アメリカの「保守の女神」と言われるアイン・ランドの最高傑作の第一部。
第一部裏表紙より
「ジョン・ゴールトって誰?」
ジョン・ゴールトという名前?が不意に出てきて、意味がわからない。そこが気になる。
まずジョン・ゴールトが何なのかを知りたくて、読み進めていった。
読み進めるうちにダグニーの格好良さ、美しさに惹かれ、リアーデンのカッコよさに惚れていく。
次々と消えていく実業家たち。アメリカで何かが起きている。
どうなっていくのか、先が気になるところで第一部が終わる。
第二部 二者択一
生産統制が強化され、深刻な不況にみまわれるアメリカ。失意のダグニーは工場跡で偶然発見した奇跡の大気発電モーターの設計者を探し出すことを決意する。強欲な実業家への批判が高まる中、ジムの結婚式で、幼馴染のフランシスコが「お金は諸悪の根源ではなく、名誉の象徴」と演説をおこなう。人間社会をつかさどるべき真の正義とは何か。利他主義の欺瞞を喝破し、二十世紀アメリカの進路を変えた資本主義の聖典。
第二部裏表紙より
生産統制。それは企業の生産を統制することで貧富の差を無くすことだと理解した。社会主義と同義かな?
自由の国アメリカで社会主義をやったらどうなるか、ってのが本書のテーマなのかな。
で、生産統制に反対する資本主義者の主張が以下。
利益のためだけに働く。利益=自分が提供できるサービスを購入してくれる人、購入できる人に売ってできる利益。損失を覚悟で提供することはない。顧客が損をしてまで購入する必要もない。顧客のために自分の利益を犠牲にはしない。提供者の利益のために顧客が犠牲になる必要もない。
対等な立場で、合意的に相互利益のために取引する。それで得た1円を誇りに思う。自主的な合意により金を稼ぐ。
生きているという事実。生きていくために働かなければいけないという事実。
人生で重要なのはどれだけいい仕事ができるか、それが人間のたったひとつの価値の尺度であり、能力による秩序が金本位制に基づくたったひとつの道徳秩序である。
金は悪ではない。お金を罵るものはそれを卑劣なやり方で手に入れたもの。お金を敬うものはそれを稼いだもの。努力の成果を交換するための合鍵。生きる手段。お金は生きた力。交換の手段。人の思考があらゆる生産物とこの世に存在したあらゆる富の根源。富は人の考える能力の産物。正直者とは自ら生産しただけしか消費できないと知っている人間。お金は道具。お金は結果。お金は社会の美徳指標。
無能な人間は寄生虫。
巨人アトラスは頑張って世界を担ぐが報われない。肩をすくめた方がいい。起業家達こそがアトラスであり資本主義そのもの。
全てを止める政策(生産統制)。止まった水は濁る。変化のないものは滅びる。地球の自転が止まったら?
第二部の見どころはフランシスコの演説。著者の主張がたっぷり含まれていると感じた。このフランシスコの演説にはほぼ同意できた。
第三部 AはAである
謎の「破壊者」に連れ去られた研究者ダニエルズを追うダグニーの飛行機がロッキー山中で墜落した。峡谷で失踪者たちに再開した彼女は奇跡のモーターの秘密を知る。鉄道統一計画によって物流が滞りいよいよ混迷を極めるアメリカ。待ったなしの経済危機のさなかにラジオから流れてきたのは「破壊者」の声だった。三時間に及ぶ演説で語られたの命の規範とは・・・・・・。
アメリカの「保守の女神」アイン・ランドによる二十世紀資本主義の最後の弁明。
第三部裏表紙より
くだらない仕事なんてない。それをやりたがらないくだらない人間がいるだけ。
第三部の見どころは三時間に及ぶ「破壊者」の演説。
著者の主張は全てここに凝縮されているといってもいいと思う。2000ページ読む時間がない人は、この演説部分を読むだけでも充分じゃないでしょうか。
人間は知識を得ることなしに生きていくことはできない。知識を得る方法は理性。理性は感覚により提供されたものを知覚し、認識し、統合する機能。
理性、目的、自尊心 人生最上の支配価値。
死なないために生きるのではなく、人生を全うする。人生を全うすることは死を避けることと同意ではない。
道徳、犠牲、愛、人生。
己の人生とその愛によって、私は誓う、私は決して他人のために生きることはなく他人に私のために生きることを求めない。
感 想 まとめ
いや~、読むのに時間かかった!
文庫で読んだんだけど、一部一冊で三冊。一冊が700ページくらいあって、内容も山あり谷ありで。盛り上がる部分は勢いで読むんだけど、つまんない部分は読むのが進まなくて他の本読んだりしちゃって。
本書にはいろいろな人たちが登場する。主人公であるダグニー、資本主義のヒーローであるリアーデン、「たかり屋」代表のジム、弱者であるリアーデンの家族、そして「破壊者」。皆それぞれ違う立場、価値観の中で生きている。「破壊者」は、今の社会が許せない。だから一度社会を停止させて、終わりにしようとする。
総合的には面白い本だったと思う。だけど破壊者の演説にはちょっと吐き気がした。そんな風に生きていけるのはごく一部の人間だけだと思う。そのごく一部の人間しか生きていく価値がないのだとしたら、資本主義なんてのは、間違っているんじゃないのか?
能力第一主義で、能力が高い人が富をたくさん手に入れる。それはいい。でもその人達の手足となって働く人がいて、社会のために働く人がいて、世界は成り立っている。利己主義、それも別にいいと思う。自分の利益だけを考える。それが純粋な自分の人生だから。でも以前読んだ『自省録』では、自分の利益が社会の利益になるようにしなさい、とあった。ぼくはこっちの考え方の方がいい。
それより、本書はなんで「たかり屋」や「弱者」の中に良い人がいないのかな?人格できてる人は全て資本主義陣営。まあ、著者の主張を通すためだとは思うけど少し露骨かな。社会主義陣営にも少しは「善い人」がいてもいいと思うけど。
<ネタバレ>
あと、ダグニー達もちゃっかり人殺してるからね。そこだけはダメでしょ。人の道踏み外しといて、自分達だけ理想郷へGOってか?邪魔なら殺していいんかいって。そんなやつらに徳だの人生の目的だの言われてもなあ。最後に、エディーが可哀そうすぎる。エディーみたいな人が報われない世界なら、それは間違ってる。まあ現実はそんなもんだけど。ジョンのせいでエディーが可哀そう、よってぼくはジョンが嫌い。以上