芦沢央(あしざわよう)さんの「汚れた手をそこで拭かない」を読んだので、各篇のあらすじと、最後にまとめ感想を書きました。
2020年9月に初版が発行された本書。
著者の芦沢央さんは他に「許されようとは思いません」「火のないところに煙は」等があります。
ただ、運が悪かっただけ
「非常事態にこそ本性がでる、という言葉があるけれど、やはり非常事態に出るのは非常事態の感情であって、それがその人の本質や本音だと考えるのは早計だ。」――とても同意の言葉。やはり非常時は非常時の顔が出るものだと思います。だからこそ、非常時への備えが大事なんだと思う。非常時にも普段の力を出せるように。
「もしあなたが何か苦しいことを抱えているのなら、私があちらに持っていきましょうか」――とてもやさしい奥様。自分が死ぬときに、残される相手を想ってこんなセリフ言えるかなあ。ぼくも、最後にこういうことを言える関係を家族と築きたいな。
誰の「運が悪かっただけ」なのかな。
埋め合わせ
プールの水ってそんなにお金がかかっているんですね。知らなかった。
学校の先生も大変だ。いろいろ業務がある上にプールの水の管理もしなくちゃいけないとは。
ミスに気付くと誰でも千葉先生のように考えてしまうのでは。そこで正直に打ち明けるか、誤魔化すか。
たいてい、後になるほど事態は収拾がつかなくなるから、早めに打ち明けるのがベストですよね。
わかっていても難しい。ミスを認めるのは苦しいものです。
忘 却
この話のようなことってホントにあるのでしょうか(電気に関するところ)。想像もしたことなかった。
忘れる、ということも人間の本能や自己防衛機能の一つなのでしょう。生きていけないですよね。つらいこと、嫌なことが忘れられないと。
お蔵入り
完全に少女が正しい。
そこを読んだだけで、少女の動機はすぐわかったのに、登場人物たちはなんで気付かないのだろう。
思春期の女子に言っていいことと悪いことの区別もつかないのかな。現実にもこんなテレビ番組があったら吐き気して観るのやめるわ(この小説の中のテレビ番組のことです)。
いじめみたいなものだよね。本人も嬉しがってるでしょっていって否定できない雰囲気出して。ノリが悪い、みたいな。
ミモザ
やっぱり不倫はいけませんね。
主人公の不運は全て不倫をしたことから。
それを悪いことだと思っていない時点で、主人公の末路は決まったようなものでしょう。
不倫、ダメ、絶対。
まとめ
初読の作家さんでしたが、面白かったです。
表題の作品は5篇の中に入っていませんでした。
てことは「汚れた手をそこで拭かない」ってのは、5篇に共通するキーワードみたいなものでしょうか。
5篇の登場人物たちは、それぞれ小さなことから大きなことまであるけど、何か「ミス」をします。その「ミス(汚れた手)」をどうするのか(どこで拭くのか)っていう意味ですかね。ぼくが思うに、ですけど。
1番タチが悪いのは「ミモザ」の人でしょう。自分の「ミス」に気付いていないんだから。そこに気付けなかったら、対処も全部間違えますよね。自分を変えることもできません。
だから「気付き」が大事なんですね。って最近好きなマインドフルネスにつなげて、終わりとします。