正欲 感想・紹介

朝井リョウさんの「正欲」を読み終わったので、感想とあらすじを紹介します。

ネタバレはありません。

「たとえば

街を歩くとします。

すると、いろんな情報が視界に飛び込んできます。

空の青さ、人々の足音、見かけない地名の車のナンバー。

――中略――

それはつまり、この世界が、【誰もが「明日、死にたくない」と感じている】という大前提のもとに成り立っていると思われている、ということであります。」

「正欲」3,4頁より

ここを本屋で読んで、購入を決めました。先が気になりすぎます。

帯では「2022年本屋大賞ノミネート!」

読む前には戻れない強烈な読書体験・・・・・・これは特別な本です。

等書かれていますが、僕が購入を決めたのは導入部分を読んだからでした。

タイトルは「正欲」

正しい欲、ってなんだろう。そんなことを考えながら先を読んでいきました。

多様性

物語はある事件の記事から始まります。

その事件が起きるまでを、何人かの視点で進んでいきます。

内容は、多様性についてかなり考えさせられるものでした。

人は基本的に自分が理解できないことを嫌悪し、迫害します。田吉のように。

LGBTQ+やSOGIという言葉が浸透してきて、社会的にも認知されていますが、その中にも当てはまらない人たちは、どうなるのでしょうか。

多様性もあくまで理解できる範疇でしか、理解されない。

正欲とは

正欲とは「明日生きていたい」という欲、と理解しました。

人間であればだれもが持っている欲。

たぶん世の中には僕が想像もしないようなことで悩んでいる人達がいるのでしょう。

理解できるはずがありませんよね。僕はその人ではないので。

でも寄り添うことはできる。「繋がる」ことはできる。

読んでいてもうひとつ、「正欲」ってこれだな、と思うものがありましたが、ネタバレになりそうなのでここでは書きません。

表紙は・・・・・・

表紙は「カモ」?

足に銀色の輪がついたカモは何を意味するのだろうか・・・・・・。

僕は最初に見たときは、カモが墜落しているように見えました。落ちていくカモ。

水に潜っているようにも見えますが、僕は落ちていくように見えました。

でも銀色のリングがあるということは、繋がっているのでは?

誰かと、何かと。

それで救われているのでは?

読み終わった後はそう思うようになりました。

それとも・・・・・・

鳥の足環って、個体識別のためのものらしいです。

その足環を付けた「カモ」が落ちていく。意味深です。

カモって「犠牲」「利用」の象徴らしいです。「感受性」を表すとも言われます。

いろんな意味が込められていそうな表紙ですね。

いや~、表紙と内容を考察するの、楽しいですね。

読んだ後の受け止め方によって表紙の意味が変わってくるような気がしました。

初めての朝井リョウさんでしたが、非常に面白かったので他の著作も読んでみたいと思います。