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森岡毅著『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』を読んで。

単行本情報

著 者森岡 毅
発行者郡司 聡
発 行KADOKAWA
発行日2016年4月23日
頁 数261

概 要

たった1つの考え方」ってことは、この本の結論はわかりやすい。

そう、そのたった1つのこととはズバリ「マーケティング思考」をもつこと。

マーケティング思考をもつことによって、USJは奇跡的な復活を遂げた、と言っているわけだ。

そしてそれは個人にも大切なことだと。

じゃあそのマーケティング思考ってどんなものなのかというと。

マーケティング思考は、論理的思考のなかの一部。

論理的思考>戦略的思考>マーケティング思考 のような関係らしい。

そもそもマーケティングとは

マーケティングとは商品を「売る」のではなく、「売れる」ようにすること。

売れる仕組みを作ること。

消費者視点で考えること。これは難しい。組織の利害と個人の利害が一致しないから。個人の利害>会社の利害。

マーケターにとって大切なスキルとは

戦略的思考能力を身につけること

1 仕事の成果が抜群に上がる 大事なことに集中して取り組めるようになる

2 説得力が激増する 

戦略とは

何か達成したい目的を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと。資源配分を選択する。

戦略はなぜ必要か

達成すべき目的があるから。資源は常に不足しているから。

資源とは

「カネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産」が6大経営資源

経営資源は、使う人が認識できていないと、使えない。

認識していれば、増やすこともできる。

最も大切な資源はヒト

ヒトだけが他の資源を使うことができる。

「例えビルや工場や資金の全てを失っても、この素晴らしい社員たちさえ健在ならば、10年もあれば全て元通りにできる」

戦略用語

目的:命題、最上位概念

目標:資源集中投下の具体的な的

戦略:資源配分の選択

戦術:実現するための具体的なプラン

「戦略的に考える」とは「目的」⇒「戦略」⇒「戦術」の順番で大きいところから考えられるようになること。

良い戦略とは

1 やることとやらないことが明確に区別できている。

2 資源がその戦局での勝利に十分である。

3 短期ではなく、中期的に維持継続できる。

4 長所と短所と特徴を有利に活用できている。

マーケティングフレームワーク

マーケティングフレームワーク:戦略的思考のフレームワークを使ってマーケティングの手法を整理したもの。

戦況分析:市場構造をよく理解して、それを味方につけるためにやる。市場構造に逆らって「地雷」を踏むことのないように。戦況分析から始めることが大切

5C分析

1 自社の理解:全体戦略を理解、使いうる資源を把握、長所及び短所の把握

2 消費者理解:量的に理解、質的に理解

3 流通等中間客の理解:敵でもあり、見方でもある第3者

4 競合他社の理解:自分の目的が競合している場所とは?抽象的に、自分が提供している価値を考える。

5 取り巻く環境の理解:変化に注意を払う

目的の設定

1 実現ギリギリ可能な設定

2 簡潔でわかりやすい

3 魅力的でモチベーションがあがるように

ターゲットは誰か

全ての人を喜ばせることはできない。

何を提供するのか

「人はドリルが欲しいのではない、穴が欲しいのである」

自分たちが本当に提供しているものとは

どうやって提供するのか

HOW=戦術

マーケティングミックス。4P

仕事に活かすには

消費者を「上司」や「家族」に置き換えてみる。

消費者の方を向いて、消費者のために働く。→上司の方を向いて、上司のために働く。ってこと?それだけではなくて、誰のための仕事なのかを考えることが大切、と言えるのかな。

大軍の弱み:統率が難しい、速度が遅い、補給が困難、油断しがち。大組織の弱みともいえそう。

ポジショニングとは、消費者の頭の中にある競合との相対的な位置づけ。ポジショニングは相対的なため、自分は動かなくても相手が動けば変わる、逆に自分が動けば相手も変わる。

著者のプロフィール

1972年、福岡県生まれ。神戸大学経営学部卒。96年、P&G社入社。日本ヴィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などを経て、2010年にユー・エス・ジェイ入社。革新的なアイデアを次々投入し、窮地にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させる。12年より同社チーフ・マーケティング本部長。著書に『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(角川文庫)。『確率思考の戦略論(仮)』(株式会社KADOKAWA)も近日発売予定。

裏表紙袖

P&G入社後は順調に出世をかさね、5年でブランドマネージャーという重要ポストに。

8年で世界本社(米国)に赴任

10年でアソシエイト・マーケティング・ディレクターに昇進。帰国

13年でウエラジャパン副代表

14年でUSJに転職

まあ一つ言えることは、著者はもともとの能力が桁違いに高く、運よく結果が出ていたのだろう。勉強なんかまったくしなかったと書いていたし。

感 想

日ロ戦争、バルチック艦隊の話。秋山が出てきて、司馬遼太郎の『坂の上の雲』を思い出した。あの小説は面白かったなあ。また今度読もう。

「失敗しない人生なんて、何にも挑戦しなかった臆病者の命の無駄遣い」だそうです。なんか、自分は絶対間違ってないって思ってそう。仕事しか生きがいがなさそう。人生の最後に後悔することの上位には、「仕事ばっかしてきた」ことが入るんだけどな。まあ人それぞれだからどうでもいいけど。

「胃の裏側から冷たい汗がにじみ出てくるような日々を潜り抜けることで、ビクともしない精神力が養われる」だそうです。その日々って、幸せなのかな。そんな日々の中で死んだとしたら、後悔しないのかな。

かなりの部分を戦略に費やしていた。ってことは、著者は戦略が大切だと言っているということ。マーケティング思考には戦略が大事ということだ。他の著者の戦略に関する本を読むのもいいのかもしれない。

以前読んだ本に、『戦争は戦術が全て』というのがあった。その本の中に「戦いの9原則」というのがあって、「目的」「集中」「節制」等の原則がある。マーケティング思考にもそれらは使われているようだ。

また、『孫子』の「敵を知り己を知れば・・・・・・」というのも言葉は違えど、マーケティング思考に使われているので、やはり戦略、戦術関係はマーケティング思考と深い関係があるようだ。

最後に、本書は良くも悪くも、資本主義に囚われている感じがした。参考にする部分は参考にして、共感できない(したくない)部分は、知識だけ頭の片隅に置いておこうかな。