本の情報
著 者 | 岡崎 琢磨 |
発行者 | 永田 貴之 |
発行所 | 株式会社PHP研究所 |
ページ数 | 484 |
あらすじ
『鏡の国』の原稿には、意図的に削除されているエピソードがあるという。
その「削除されたエピソードがある」ということを、作者は作中で示しているという。
作中作が示す、削除されたエピソードとは?そして、そのエピソードが判明することによって導かれる本当の作品の姿とは――。
ネタバレなし感想
すっごい面白かった。
作者の意図にハマりまくり。作者といっても作中作の作者だが。
おかげで、相貌失認障や醜形恐怖症などの障害のことも知れたし。
作中作自体も面白いけど、やっぱり全ての伏線が回収されるところが最高だった。
タイトルにもそんな意味が込められていたのかと・・・・・・。
久しぶりに時間を忘れて読書した。
感想ネタバレあり
タイトル『鏡の国』には4つの意味が込められている。
一つはルイスキャロルにちなんで、相貌失認の含み。ルイスキャロルは相貌失認だったそうだ。
二つ目は、「鏡」という自分の見た目と常に突きつけられる世の中の残酷さを表して。
三つめは、「鏡の国のアリス」になぞらえ、削除されたエピソードがあることを示唆するため。
四つ目が、「鏡」という反転する世界を表す。四つ目が一番重要で、語り手が作者ではなかったことを示す。たしかに「郷音」と「響」って名前も伏線だったんだな。ずっと違和感はあったんだけど。
作者が語り手ではないとわかったことで、主人公の、叔母(作中作の作者)への思いも変わる。全てが反転するラストは最高だった。
作中作の作者、響子の目的は「相貌失認」や「醜形恐怖症」のことを世に広め、苦しんでいる人達がいることを知ってもらうこと。本書を読んで、相貌失認やルッキズムのことをいろいろ調べたぼくは、まんまと作者の思惑にのせられたことになる。
装丁にも仕掛けが。4つに割れた鏡は、4つの意味を含むことを意味している。
随所に仕掛けが施された面白い本だった。