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小川哲著『地図と拳』の感想を書きます。

単行本情報

著 者小川 哲
発行者徳永 真
発行所集英社
発行日2022年6月30日
頁 数633

あらすじ

プロローグ 1899年 夏 高木と細川

第1章   1901年 冬 クラスニコフと林

第2章   1901年 冬 楊日綱と孫悟空

第3章   1901年 冬 周天佑と李大綱

第4章   1905年 冬 高木、奉天 福田と細川

第5章   1909年 冬 須野と細川 満州鉄道

第6章   1923年 秋 慶子と明男 東京 関東大震災

第7章   1928年 夏 福田と細川 大連

第8章   1932年 春 明男と孫丞琳 仙桃城

第9章   1932年 秋 孫悟空と孫丞琳 仙桃城

第10章  1934年 夏 細川、明男、須野 

「地図と拳」の講演、細川「『地図』とは国家である。国家とは法であり、為政者であり、国民の総意であり、理想や理念であり、歴史や文化である。どれも抽象的で形のないもの。形となって表れるのは地図が記されたとき。『拳』とは暴力のことであり、戦争がなくならないのは世界が狭いから。人間が住めるのは地球上の3~5%程しかない。ごく一部の居住可能な地を求めて戦う。ハートランドを制する者が世界を制する。」

戦争とは地図を書き換えようとする行為だ。byヒエ

仮想閣議、盧溝橋事件

第11章  1937年 秋 中川 戦線 

第12章  1938年 冬 

西洋の公園の目的は理想化された自然景観を都市部で再現すること。速度に合わせた自然景観という視点が面白い。車、鉄道、徒歩、自転車。「光」という漢字は人の頭の上に火を掲げる形に由来している。光=火。火の機能は料理、暖房、照明。光は命であり、闇は想像力。光が実像を写し、闇が虚像を写す。

第13章  1939年 夏 安井、丞琳、石本

第14章  1939年 冬 超高層のビルに必要なのはエレベーターと空調。

第15章  1941年 冬 真珠湾

第16章  1944年 冬 モニュメントの語源は「思い出させる」 明男と丞琳

第17章  1945年 夏 終戦 建築は時間をつなぎとめる物 そこにあることで過去と現在を繋いでいる。

終 章   1955年 春 地図にあるのに実在しない島の正体とは、理想郷

覚 書

恐怖が心を満たしたときに、人間がとる行動は3つ。戦うか、逃げるか、動けなくなるか。戦うのは勇敢、逃げるのは臆病、動けなくなるのは・・・・・・。

鉄道が都市をつくり、地図が鉄道をつくる、地図が都市をうむ。

オンドル: 온돌)または温突(溫堗、おんとつ)は、朝鮮半島中国東北部にみられる暖房装置朝鮮半島では、クドゥル(구들)ともいう。中国東北部では(カン)または炕床などという。朝鮮で温突、中国ではと呼び、温突は床全体を暖めるのに対しが、は寝床のみ暖めるが、朝鮮は座式、中国は腰掛式という生活様式の違いによる。起源の考察に関しては、村田治郎『温突とカンの起源に関する考』に詳しい。類似の暖房法では古代ローマハイポコーストがある

正しさとは神のこと、悪とは拳のこと。ロシア人神父の言葉。

地図は文字よりも先に誕生した。狩人が獲物の場所を示した絵。それが地図の始まりだ。

架空の島「画家の妻の島」「オランダ人のマント」「モルガナのお化け」

建築には歴史と思想が表れる。

金科玉条 この上なく大切にして従うべききまり。金や玉のように立派な法律。

糊口をしのぐ どうにかこうにか生計を立てて貧しいながらも暮らしていく、という意味合いで用いられる言い回し。 「糊口」は「粥(のような粗末な食事)を食べる」という意味の語で、そまつな物ばかりだが何とか食べていく

揶揄い からかい

君たちの後ろには過去と言う名の一本の道がある。君たちの前には未来と言う名の交差点がある。

未来を予測することは過去を知ることの鏡。

自分が正しいと思うことと、自分がすべきことはかならずしも一致しない。

感 想

重厚な物語。

昔から地図は好きだけど、地図に対する考え方が変わった。

地図の一本一本の線に歴史や人々の想いが込められているんだろうな。

そして戦争でその地図を書き換えていく。歴史や人の想い、考えを変えていく。

いろいろ心に残った言葉も多かった、非常にいい読書体験だったと思う。