本の情報
著 者 | 伊坂 幸太郎 |
発行者 | 森永 公紀 |
発行所 | NHK出版 |
発行日 | 2019年7月5日 |
頁 数 | 380 |
あらすじ
夢を見る。とてもリアルな夢だ。
夢の中でぼくは、戦士となってモンスターと闘っている。
起きるとそれは消えていくが、心に少し残ってる。
会社員、政治家、アイドル。3人が見る夢と現実がリンクする?
夢の中でモンスターを倒すと、現実のトラブルも解消されて――。
最大最強の敵を前に、倒れる勇者達。現実の世界で起きるトラブルとは?
感 想(ネタバレ無)
最初は全くわからない「絵」から始まるので、「?」でした。あれ?小説買ったはずなのに、って感じです。まあ、読んでいくうちにその「絵」の意味もわかりますし、その絵の重要性も理解します。伊坂さんの新しい趣向ですね。
その挿絵もいい味だしてます。星新一さんの作品で多く挿絵を書かれている、和田誠さんを思い出しました。あの人の絵、大好きなんですよね。クジラアタマの王様の挿絵を書いているのは川口澄子さんという方みたいです。
本書は夢と現実がリンクしていて、同じ夢を3人で共有している、というのが大筋です。
現実のトラブルと夢でのモンスターとの戦いが重なっている。夢でモンスターを倒すと現実でのトラブルも解決する。ちょっとファンタジーチックなお話です。伊坂さんらしい、爽やかな読後感で読みやすいです。
本書が話題となったのは、やっぱり最後のトラブルの話ですよね。これを2019年に書いているのがすごいです。そこはネタバレ部分で書きます。
以下は個人的に興味を惹かれた部分です。
「短期的にはつらくても、大局的にはいい結果になること」 中長期で物事を考えられるようになりたいです。
「不機嫌を装った方が得。穏やかな人は軽く扱われる」 そうなんですよね。不機嫌な人に話かけること自体が嫌だから、不機嫌な人って余計な仕事振られなさそう。ああ、最近忙しくて、疲れを顔に出してるなあ。溜息ついたり。ちょっと改めよう。
「自分自身が納得していないものを他人に納得してもらうことはできない」 仕事で上司に説明するときって、自分が本当にやりたいことは上手く説明できるけど、自分の意に沿ってないことを説明するのは難しい。そもそも自分はそう思ってないんだもん。でもやらなきゃいけない時もある。その時に自分を納得させるのが難しいんだよなあ。
「問題や課題があったら、それが収束する状況を洗い出す。それからその状況にたどり着くための道筋を挙げていく」結果から考えるってことですかね。参考になります。
「トラブルの連続こそが人生」そう思えるようになりたいです。平穏が一番好きなんですけどね。
「杞の国の人は天が落ちてくることを心配していたことから杞憂が生まれた」へ~。
「暇になると人は心配事に溺れてしまう」暇だから余計なこと考えてしまうってことですね。忙しいとそれどころではないですもんね。
感 想(ネタバレ有)白文字
「ハシビロコウ」のことを和名で「クジラアタマの王様」というらしい。夢の中でのラスボスはこのハシビロコウ。大きな怪鳥のような姿で襲い掛かってくる。
現実世界でのトラブルとは、パンデミック。
2019年に出版された本書。発行日のその半年後に新型コロナウイルスの大流行。まるで予言のよう。話題になったのも頷けます。